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海外での新薬開発の情報です。副作用の点で改善された新世代ステロイド剤の新しい剤型がイタリアの製薬会社によって開発され、潰瘍性大腸炎に対して治験段階にあるようです。 【作用のメカニズム】 budesonideはニュー・ステロイドと呼ばれる薬剤の1つで、病変部で薬効を発揮したあと、体内に吸収されると速やかに分子の形が変わって作用性が落ち、体外に排出され易くなるため、副作用の程度が比較的低いという特長がある薬剤です。 吸収されてしまうと薬効が落ちますので、ブデソニドが直接炎症部に及ぶように投与形を工夫する必要があるのですが、MMXと名付けられているdrug delivery system(薬剤送達システム)を採用して大腸全体にまんべんなくブデソニドが行き渡るようにしたようです。 【開発コード】 CB-01-02 【薬剤名】 budesonide(ブデソニド) 【薬剤の系統】 ニューステロイド剤・徐放剤カプセル 【現在の開発者】 Cosmo Pharmaceuticals S.p.A. (炎症性腸疾患や感染腸炎に対するMMXの技術を応用した治療薬を主要な開発分野としているイタリアの製薬会社のようです。) 【開発の段階】 海外: 軽症および中等症の潰瘍性大腸炎に対して第3相 【投与形態】 経口(=けいこう。口から飲む)徐放剤カプセル 【既に認可を得ている適応】 ブデソニドにつきましては、喘息に対する吸入剤、クローン病に対する経口徐放剤、鼻炎に対する点鼻剤などが臨床で既に使用されています。 また、MMXの技術は5ASA製剤にも応用されて、Lialda/ Mezavantという商品名で潰瘍性大腸炎の治療薬として海外で既に臨床で使用されています。 【副作用】 ステロイド剤としてよく用いられる経口プレドニゾロンよりは副作用が少ないようですが、副作用がゼロという訳ではないようです。頻度が少ないとしても同じような副作用が起こりうると考えておいたほうが良さそうです。 【詳細】 ブデソニドは、吸収されると薬効が落ちますので、直接炎症部に及ぶように投与形を工夫しなければ効果を発揮しません。そこで、ブデソニドをクローン病や潰瘍性大腸炎の治療薬として利用するために各製薬会社によって幾つかのdrug delivery system(薬剤送達システム)が採用されているようです。 別の製薬会社が開発した先行商品であるエントコートECカプセル(Entocort EC Capsule)は、USAではクローン病に対して既に認可され、日本でもクローン病に対して治験中なのですが、有効成分のブデソニドを小腸の最後の部分から上行結腸にかけて放出するように設計されているようです。 一方、Cosmo PharmaceuticalsはMMXと名付けられているdrug delivery system(薬剤送達システム)を応用しているようです。薬剤を大腸全般にまんべんなく放出することが出来るそうです。 下の「主な情報源」の一つめのリンクには、MMX薬剤送達システムが時間経過と共にどのように薬剤を放出するかをシンチグラフで観測した結果が画像として6つ示されています。MMXカプセル服用から1時間半後に十二指腸に達していますが、薬剤の放出はまだ始まっていないようです。4時間半後には上行結腸に達してそこで放出を開始しているようです。7時間半後には薬剤を放出しながら横行結腸の真ん中に達しています。10時間後には脾(ひ)湾曲部に達しています。16時間後には下行結腸からS字結腸あたりに達しています。24時間後には直腸に達しています。どのような患者でもこの通りにうまくいくのでしたら素晴らしいです。 MMX技術の詳細ですが、どうやら、親油性基材と親水性基材に有効成分を含有させて錠剤とし、アルカリ環境下で溶ける特殊なアクリル系の樹脂でその周りをくるむということらしいです。樹脂はpHの数値が7以上、つまりアルカリ性になると溶けるものらしいです。どうやら小腸の最後のあたりで溶けるようです。そして、親水性基材が水分を吸収してゲル状になって薬剤の放出をコントロールするようです。親油性基材は水分の侵入をコントロールして急激な薬剤放出を阻止しているようです。 ステロイド剤の副作用に悩まされている潰瘍性大腸炎患者は少なくないですから、この製剤が日本でも使えるようになればと思います。 【主な情報源】 ◆イタリアの患者団体AMICI配信の最新情報: A.M.I.C.I. Federazione Nazionale - Associazione Malattie Croniche dell'Intestino - Trial Budesonide MMX (イタリア語) ◆MMX技術を使った5ASA剤の徐放剤Lialdaの動画解説: MMX Technology, Mesalamine Delivery in Ulcerative Colitis Video Demonstration| Lialda.com (英語)
by pascor
| 2009-02-23 22:57
| 新薬開発状況
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