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クローン病患者のおなかを開いた時に、腸間膜にたくさんの脂肪蓄積がみられることが多いという事は、1932年にCrohn氏らがこの病気を学会に報告した時には既に知られていたようです。まだ原因はよくわかっていませんが、ひょっとするとそのメカニズムを解明することで、クローン病の発症原因を突き止めることが出来るかも知れません。 クローン病における腸間膜への脂肪蓄積現象についての基礎事項と最新の研究成果を、フランスの研究チームが論評にまとめたものが医学専門雑誌Gutに掲載されていましたので、その概要を皆さんにお知らせしたいと思います。 「腸間膜」とは、腸の管をおなかの中でその位置に保持する役割をしている膜です。腸への血管、神経、リンパ管も腸間膜の間をはっています。 wikipedia英語版の項目「Mesentery」より引用 http://en.wikipedia.org/wiki/Mesentery (文字が読みにくい時は画像をクリックしてください。画像が多少大きく表示されます) 上の図はおへそあたりでの輪切り見取り図です。赤い線が腸間膜(Mesentery)です。 小腸(Small intestin)や大腸(Colon)が腸間膜によって固定されていたり、ぶら下げられたりしている様子がわかると思います。 wikipedia英語版の項目「Mesentery」より引用 http://en.wikipedia.org/wiki/Mesentery (文字が読みにくい時は画像をクリックしてください。画像が多少大きく表示されます) 上の図は縦切りの見取り図です。横行結腸(Transverse colon)は、上行結腸(Ascending colon)や下行結腸(Descending colon)と違って、腸間膜によってぶら下げられている状態であることがわかると思います。横行結腸はぶら下げられているために、おへその下あたりまで垂れ下がって来ることもあるそうです。 クローン病ではこの腸間膜に脂肪が蓄積している場合が多い事が知られているのですが、腸を包み込んで圧迫するかのような形に蓄積している事も特徴のようです。下のリンクはクローン病患者の病変小腸の写真です。多少衝撃的な画像ですので、覚悟がある方だけクリックしてください。 Crohn disease - creeping fat sign (gross pathology) | Radiology Case | Radiopaedia.org (英語) 腸間膜に黄色っぽい脂肪が蓄積し、更に腸管を包み込むように這い込んで行っている事がわかると思います。この所見は、英語では“fat wrapping”とか“fat creeping”などと呼ばれているようです。 腸間膜脂肪組織は動脈硬化と関係があるという事で研究が進み、最近はメタボリックシンドローム(=非健康的内臓脂肪蓄積)と深い関係があるという事で盛んに研究がされています。その過程で、この腸間膜脂肪組織は、ただのエネルギー貯蔵庫や体温保温材としてだけではなく、様々なホルモンや伝達物質を分泌する一種の臓器とみなすべきものであるという事が段々わかってきたようです。 例えば、全身性脂肪萎縮症という疾患にかかって脂肪組織が無い状態になると、インスリンが作用しなくなるため、難治性糖尿病を発症する事が知られているそうです。 【概要を紹介する論評】 Mesenteric fat in Crohn's disease: a pathogenetic hallmark or an innocent bystander? Peyrin-Biroulet L, Chamaillard M, Gonzalez F, Beclin E, Decourcelle C, Antunes L, Gay J, Neut C, Colombel JF, Desreumaux P. Gut. 2007 Apr;56(4):577-83. Epub 2006 Sep 6. <PubMed Centralの無料全文.html> ▽▽▽▽▽▽ ここから論文の概要 ▽▽▽▽▽▽ 白色脂肪組織は単なるエネルギーの貯蔵庫や体温保持のための組織だと考えられてきたが、近年、免疫や炎症に大きく関わる組織である事がわかってきた。脂肪細胞は免疫細胞であるマクロファージに似た機能も持っていて、免疫に関する受容体を持っていたり、TNF(腫瘍壊死因子)などの炎症に関係する伝達物質を分泌したりしている事がわかっている。肥満や動脈硬化にも関連していることが判っている。 (草はみ注: このTNFを中和する薬剤がインフリキシマブ(商標:レミケード)です) 脂肪細胞は様々な伝達物質を分泌していて、それらはアディポルモンとアディポサイトカインの2つのグループに大きく分けられている。 アディポルモン レプチンは主に脂肪細胞によって分泌され、その血中濃度は脂肪の量に比例する。食欲コントロールや炎症誘起の働きを持っている。 (草はみ注: 美容形成外科手術として脂肪吸引をおこなうと、脂肪細胞の数が減少してしまうためにレプチンの量が減って食欲が増してしまい、その結果激しいリバウンドを起こし、結局逆効果になることがあることが問題となっているようです。) アディポネクチンは脂肪細胞によって分泌され、その血中濃度は脂肪の量に反比例する。動脈硬化抑制や、インスリンの効果を増すことによる糖尿病抑制の働きを持っている。炎症誘起性なのか抑制性なのかはよく判っていない。 (草はみ注: メタボリックシンドローム(非健康的内臓脂肪蓄積)が糖尿病の前段階であることの理由の一つとして、このアディポネクチンの減少が怪しまれているようです) レシスチンは主に免疫細胞によって分泌され、炎症抑制の働きを持っている。 アンギオテンシノゲンやPAI1は、高血圧や血栓症などの、脂肪過多に関連する疾患に関係している。 アディポサイトカイン TNFalpha、IL6、IL1beta、IL18などの炎症誘起性サイトカイン。 TGF、IL10、IL1RAなどの炎症抑制性サイトカイン。 IL8、MCP1、MIP1alpha、MIFなどのケモカイン。 M-CSF、HGF、VEGF、FGF2、FGF10、NGFなどの増殖因子。 これらの物質を分泌しているという事実から、白色脂肪組織は単なるエネルギー貯蔵庫ではなく、エネルギー利用や炎症反応をコントロールする様々な物質を分泌する複雑な分泌組織であることがわかる。 炎症性サイトカインであるIL6の血中量の約30パーセントは腸間膜白色脂肪組織から分泌されているとみられている。 白色脂肪組織は腸内病原菌に対する防衛にも関わっているようであるとして、最近注目が集まっている。 脂肪細胞はToll様受容体(TLR)2と4を持っていることが判っており、グラム陽性菌やグラム陰性菌を探知できるようであるとされている。更に最近我々の研究グループはNOD2も持っていることを発見した。 (草はみ注: NOD2は、その遺伝子に異常がある人が白人のクローン病患者に多いことが判っているタンパク質です。) 腸間膜白色脂肪組織や腸間膜リンパ節から生きた細菌がみつかることがある。それらの場所が、腸壁を突破して侵入してきた腸内細菌の溜まり場となっている可能性もある。そういった細菌に腸間膜白色脂肪組織が反応して炎症誘起物質が分泌され、クローン病の発症に到っているという可能性がある。 外科的にみて、クローン病患者の腸間膜はしばしば厚くて硬く、白色脂肪組織の過形成がみられる。 ある病院で25人のクローン病患者から摘出された腸を調べたところ、摘出小腸16片のうち12片で、また摘出大腸11片のうち7片で脂肪過蓄積(fat-wrapping or fat-creeping)がみられたという報告がある。 脂肪過蓄積は虚血性腸炎、メッケル憩室炎、大腸癌、穿孔、放射線腸炎などでは決してみられない。 腸間膜への脂肪蓄積はクローン病の発症時点で既にみられ、病歴の長さや活動度には影響されない。 クローン病患者の腸間膜白色脂肪組織には組織学的に異常がみられ、免疫細胞のマクロファージやT細胞の侵入、線維化、血管周囲炎症、血管の肥大などがみられる。更に、脂肪細胞の1つ1つのサイズが健康者よりも著しく小さく、数的には約4倍にもなっている。 腸間膜白色脂肪組織におけるTNFの源は主に白色脂肪細胞であることがmRNAを調べることで判明している。 腸におけるクローン病の潰瘍は腸間膜が接続しているラインに沿って出来る。つまり腸間膜側を「縦走」する。他の疾患ではそのような現象はみられない。腸結核の潰瘍は「横走」である。チフス、赤痢、エルシニア、腸球菌感染腸炎などのクローン病と似た広義の炎症性腸疾患では潰瘍は縦に走るが、位置は腸間膜が接続しているのと反対側である。よって、腸間膜白色脂肪組織の分泌する炎症誘起性物質がクローン病の発症に関わっているのではないかという予測が出来る。 腸間膜への脂肪蓄積は腸壁を貫く炎症、線維化、muscularisation、狭窄の発生などと関連しているとの報告もある。 炎症の程度を示す検査値であるCRPの値が高いクローン病患者ほど、腸間膜白色脂肪組織の量が多いとの報告もある。 △△△△△△ ここまで論文の概要 △△△△△△ 【そのほかの情報源】 Les malades de Crohn font-ils de la bonne ou de la mauvaise graisse? (フランス語) La Lettre de l'hépato-gastroentérologue Vol. X - supplément au n°5-6 - mai-juin 2007 Les Nouvelles des MICI Können Fettzellen nur herumpummeln? (ドイツ語) DocCheck - Newsletter 16. Mai 2008 -
by pascor
| 2008-05-21 22:47
| クローン病
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Comments(3)
炎症と脂肪組織拡大には関係があるそうです
以下のDiscussion参照 http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1550413114002137 参考 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17604368 Mesenteric adipose tissue alterations resulting from experimental reactivated colitis.
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草はみ
at 2015-11-27 22:07
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武田さん、情報をありがとうございます。
さっと目を通してみました。 例えば、筋肉に能力を超える負荷がかかると、筋肉痛が起こる、つまり筋肉に軽い炎症が起こり、免疫細胞によって古い筋肉組織の撤去がおこなわれ、そして空いた場所に新たに前より規模が大きな筋肉や毛細血管が構築され、筋肉が太くなる、というような事が起こりますが、同じような事が脂肪貯蔵組織でも起こっているという事かも知れません。 脂肪が多い食事をすると、脂肪貯蔵組織に能力を超える負荷がかかって、軽い炎症が起こって(以下同様)、、、という事かも知れません。 脂肪組織におけるその炎症にはTNF(腫瘍壊死因子)による信号伝達が深く関わっているかも知れないという事も動物実験で確かめられたという事のようです。 腸壁バリアを透過して腸間膜脂肪組織に侵入して来たLPS(=腸内細菌の死骸)が、脂肪組織に炎症を起こし、脂肪組織が再構築によって増殖するというような事がクローン病で起こっているのではないかとも、ちょっと書かれていました。 (次のコメントへまたぐ)
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草はみ
at 2015-11-27 22:08
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クローン病の発症や増悪に関係しているTNFは腸間膜脂肪細胞が発生源ではないかという事がますます疑わしくなると思います。また例えば、MAP(mycobacterium avium spp. paratuberculosis)菌とか、何かしつこい菌かウイルスが腸間膜脂肪細胞に棲み付いているという可能性もあるかも知れません。
もしそういう事ならば、上下腸間膜動脈から抗TNF製剤を作用させるというピンポイント治療戦略も考えられると思います。 ところで、クローン病の炎症が腸間膜への脂肪蓄積を引き起こしたのか、それとも腸間膜の脂肪蓄積がクローン病の炎症を引き起こしたのか、卵が先か鶏が先かという問題も出てきます。腸間膜での炎症が、腸間膜への脂肪蓄積とクローン病を起こしたという線も考えられます。
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