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アルカリフォスファターゼ(ALP)は血液検査の項目に入っていて、基準値を越えると肝臓などに異常があるのではないかと疑わなくてはならないので、ひょっとすると悪い物質なのではないかと思われているかもしれませんが、この物質を十二指腸からチューブで注入することによって潰瘍性大腸炎の症状を改善できる可能性があるということで、オランダの製薬会社が治療薬として開発を進めているようです。 【薬剤の系統】 ウシ由来アルカリフォスファターゼ 【現在の開発者】 AM-Pharma オランダの新薬開発会社。「Toll様受容体を介した生来免疫細胞の活性化」「細胞外物質の脱リン酸化による病状改善」を得意分野とする。 【開発の段階】 海外: 潰瘍性大腸炎に対して第2a相 【投与形態】 チューブによる十二指腸からの投与 (詳細は書かれていないのですが、投与の方法は ” through a duodenal drip” となっており、おそらくは鼻注チューブの先端を十二指腸に到達させてそこからゆっくりと注入したのだと思います。) 【既に認可を得ている適応】 無し 【ほかに治験が実施されている疾患】 海外: 敗血症、急性腎不全に対して第2相 【副作用】 重篤な副作用は現在のところ特に報告されていない 【詳細】 ステロイド剤や免疫抑制剤でも改善しない中等症から重症の潰瘍性大腸炎入院患者21人にアルカリフォスファターゼ10mg/日をチューブでもって十二指腸から7日間投与したところ、 3週間後、 改善が見られたのは、 Truelove-Wittsスコアで評価した場合63%、 Mayoスコアで評価した場合47%。 緩解が見られたのは、 Truelove-Wittsスコアで評価した場合21%、 Mayoスコアで評価した場合5% だった。 9週間後、 改善が見られたのは、 Truelove-Wittsスコアで評価した場合79%。 緩解が見られたのは、 Truelove-Wittsスコアで評価した場合26%、 だった。 重篤な副作用は見られなかった。 ▽▽▽▽▽▽ ここから内容が少し専門的 ▽▽▽▽▽▽ 潰瘍性大腸炎患者の炎症が起っている腸粘膜ではアルカリフォスファターゼの濃度と活動度が落ちているそうです。投与されたアルカリフォスファターゼはグラム陰性菌の有毒性の死骸であるエンドトキシン(内毒素)や、アデノシン3リン酸(ATP)を分解することによって消化管粘膜の炎症を沈静化させるそうです。 グラム陰性菌の死骸から壊れ出る細胞壁はエンドトキシン(内毒素)と呼ばれ、リポポリサッカライド(リン脂質と多糖類の高分子複合体)という成分で出来ています。この物質はマクロファージなどの免疫細胞をToll様レセプターなどを介して刺激して炎症を引き起こすそうです。 アデノシン3リン酸(ATP)は細胞を動かすときのエネルギー源としてよく知られた物質ですが、炎症などが起こったときに多形核白血球や内皮細胞から放出され、免疫機構を刺激して炎症を更に拡大させる働きも持っているそうです。 AM-Pharmaはウシ由来のアルカリフォスファターゼを使用して治験を行なっていたようですが、これを遺伝子組み替え技術でもって作成したヒト型アルカリフォスファターゼにかえて一から治験をやり直すようです。 △△△△△△ ここまで内容が少し専門的 △△△△△△ 【主な情報源】 AM-Pharmaのプレスリリース: AM-Pharma announces positive results of Phase IIa clinical trial with Alkaline Phosphatase for ulcerative colitis First clinical results confirm potential new application of key product in AM-Pharma’s pipeline (英語)
by pascor
| 2007-12-10 21:06
| 新薬開発状況
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Comments(2)
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by
rond
at 2007-12-11 22:15
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面白い記事ですね。UCでは免疫グロブリンと結合してアイソザイムでいうALP6が出現するらしいです。ウシ由来というだけで少し心配になってしまうのは今の御時世だからでしょうか。
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by
草はみ
at 2007-12-11 23:28
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rondさん
情報をありがとうございます。 調べてみましたら、確かに、潰瘍性大腸炎の場合は抗体IgGと結合したアルカリフォスファターゼ6の値が上昇することがあるそうです。 研究機関向けに販売されているアルカリフォスファターゼには仔ウシの腸から抽出された物があるようですね。エビから抽出されたものもあるようです(笑)。更に調べていましたら、ヒメツリガネゴケを使った遺伝子組み換えヒト型アルカリフォスファターゼの製造法が2005年に確立されたそうです。それまでは人工ヒト型はなかったのかもしれませんね。それにしても苔を利用して製造とは、なんとも。
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