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主に潰瘍性大腸炎(UC)において、又まれにクローン病(CD)において、急激に症状が悪化する例や、ステロイド剤の投与や、血球成分除去療法(LCAPやGCAP)の実施や、免疫抑制剤の投与などのあらゆる治療を行なっても効果が見られない例においては、日和見(ひよりみ)感染症としてサイトメガロウイルス(CMV)感染腸炎を合併している場合が多いという事が最近判ってきたようです。現在医学界では、サイトメガロウイルスの起こす炎症が炎症性腸疾患の難治化や重症化に大きく関わっているのではないかという事が言われているようです。 サイトメガロウイルスは免疫力が弱った人に大腸炎、肝炎、(目の)網膜炎、肺炎、脳炎などを起こすことが既に知られています。文献によりますと、これらの感染症による死亡率は決してゼロということでは無いようです。 このウイルスに対しては抗ウイルス薬のガンシクロビルが有効で、サイトメガロウイルス感染腸炎を併発した重症潰瘍性大腸炎患者に対して投与することによって腸の炎症がすみやかに軽快し摘出手術の実施を回避できる例も多いようですので、重症潰瘍性大腸炎患者に対するサイトメガロウイルス感染腸炎の早期の診断と適切な治療の実施が強く望まれます。 この記事を作成するにあたって 潰瘍性大腸炎の急激悪化例やあらゆる治療法が無効な例に対しては早急にサイトメガロウイルス感染の検査を実施するべきであるという最新の治療方針は学会や論文などを通じて専門医には浸透しつつあるようですが、炎症性腸疾患(IBD)患者を受け持っているすべての医師に一日も早く浸透することが望まれます。 この事実は最近判ってきたことのようで、関連情報や発表された医学論文はまだ少なく、診断や治療に関して医学界ではまだきちんとしたガイドラインが出来ていないようです。今回皆さんに紹介するこの記事はそのような段階において作成したものですので、内容が月単位で古くなっていく可能性がありますから、この件に関しましては最新の情報を炎症性腸疾患専門医から常に伺うようにしてください。 サイトメガロウイルス感染腸炎を合併した炎症性腸疾患の経過は? 現在、以下のようなことが様々な論文から読み取れるようです。 ◇ステロイド剤、免疫抑制剤、血球成分除去療法(LCAPやGCAP)が無効であることが多い。 ◇急激に症状が悪化することが多く、論文によっては死亡例も報告されている。 ◇摘出手術を受ける率が高い。 ◇摘出手術後の経過が悪く、論文によっては死亡例も報告されている。 ◇中毒性巨大結腸症を合併し大腸穿孔を起こす率が高い。 サイトメガロウイルス感染症とは? サイトメガロウイルス感染症は基本的に日和見(ひよりみ)感染症だそうです。サイトメガロウイルスは、免疫機構が健全な時にはおとなしく隠れていて、AIDS(=エイズ。後天性免疫不全症候群)にかかったり免疫抑制剤やステロイド剤を使用したりして免疫力が低下したときに表に出てきて活動を初め、感染者に肝炎、網膜症、大腸炎、肺炎、脳炎などの症状を起こし、それらは重篤に経過する場合も多く、文献によりますと、死亡に至る例もあるようです。 古い医学辞典には「このウイルスに対して有効な薬剤は開発されていないので、発症してしまうとその後の経過は非常に悪い」と書かれていたりします。現在はガンシクロビルという抗ウイルス薬が開発されており有効であるそうですが、投与した全員に効果ありということではないようです。また、投与で症状がおさまったとしても再発する可能性が高いようです。 サイトメガロウイルスとは? ▽▽▽▽▽▽ ここから内容がちょっと専門的 ▽▽▽▽▽▽ cytomegalovirus。ヘルペスウイルス科に属するDNAウイルス。増殖は遅い。感染先の細胞が巨大化するので「cyto(細胞)+megalo(巨大な)」という名がついている。巨細胞中には「ふくろうの目状封入体(owl's-eye nuclear inclusion)」という独特な物体がみられ、病理学的な診断における指標として用いられている。 △△△△△△ ここまで内容がちょっと専門的 △△△△△△ 日本人成人の大多数は出産の前後の時期にこのウイルスに感染し、8~9割がこのウイルスに対する抗体を持っている、つまり感染しているか感染した経歴を持つとされており、生涯体内に居続け、免疫機構が健全なときには姿を隠して症状をあらわさないが、免疫力が低下したときに表に出てきて活動を始め、様々な症状をひき起こす。世界的にみてもかなりの割合の成人が感染しているとされている。一説には40~100%が感染しているとされる。 サイトメガロウイルス感染症の治療法は? 現在はガンシクロビルというサイトメガロウイルスに対して有効な抗ウイルス薬が開発され、使用されているようです。また、ガンシクロビルの補助として「ヒト単クローン性抗サイトメガロウイルス抗体(免疫グロブリン)」というものが同時に投与されることもあるようです。 ガンシクロビルには白血球減少症や腎障害などの重篤な副作用もあるようなので、投与を受ける際には医師や薬剤師から十分に説明を受ける必要があると思います。より安全で更に有効率が高い抗ウイルス剤の開発が望まれます。 ガンシクロビルとは? ▽▽▽▽▽▽ ここから内容がちょっと専門的 ▽▽▽▽▽▽ 抗ウイルス薬。プリン骨格を持つ。DNA合成の原料であるデオキシグアノシン3リン酸の類似物質で、感染細胞内で活性型のガンシクロビル3リン酸に変化し、これがウイルスのDNA合成酵素の働きを阻害し、ウイルスの増殖を阻止する。 △△△△△△ ここまで内容がちょっと専門的 △△△△△△ 日本では、現在、サイトメガロウイルスに対する抗ウイルス薬として使用されています。 ガンシクロビルの添付文書(=医療従事者向けの説明書)の「警告」の欄には、 1)投与によって患者に骨髄機能の抑制が起こる。(つまり、血液の生産力が落ちる。) 2)動物実験で、オスに対して元に戻らない精子形成機能障害、メスに対して妊娠能の低下が見られた。 3)動物実験で、催奇形性(=さいきけいせい。胎児に奇形を引き起こす性質)、変異原性(=へんいげんせい。細胞の遺伝子に突然変異を誘発する性質)、発がん性が報告されている。 という内容が書かれていますので、残念ながら気軽に使用できるという薬剤ではないようです。投与を受けるに際しては医師、薬剤師から十分に説明を受ける必要があると思います。 炎症性腸疾患においてどのような場合にサイトメガロウイルス感染症を疑うべきか? どのような例において感染を強く疑うべきかについては、まだ世界的に認められたガイドラインは存在しないようですが、様々な関連論文からその主張するところを集めてみました。 ◆多くの論文が一致して書いている主張 主に潰瘍性大腸炎において、急激に症状が悪化する例や、ステロイド剤や血球成分除去療法(LCAPやGCAP)や免疫抑制剤などのあらゆる治療を行なっても効果が見られない例で、特に年齢の高い患者。 ◆Papadakisらの研究グループが2001年に発表した論文 患者を全身的に観察して、高熱、呼吸困難、リンパ節疾患、脾臓の肥大化などが見られる例。また、ステロイド剤が効かない例。また、免疫抑制剤を投与して一時的に効果が見られるがすぐに症状が悪化する例。 ◆Kishoreらの研究グループが2004年に発表した論文 ステロイド剤抵抗性(=投与しても効かない)またはステロイド剤依存性(=どうしても切れない)IBD患者で、特に全大腸炎型の女性患者。女性に多いことは、Wayaらの研究グループが2003年に発表した論文も主張している。 ◆Inoueらの研究グループが2005年に発表した論文 大腸内視鏡検査において、縦方向に走る傾向のある散在性の潰瘍が見られる例。 ◆いくつかの論文が書いている主張。 大腸内視鏡検査において、病変部に「打ち抜き様潰瘍(punched-out ulcer)」がみられる場合。また、地図状の潰瘍がみられる場合。 (注:打ち抜きよう潰瘍=まるで事務用品の「穴あけパンチ」で穴を開けたかのごとくに病変部粘膜に円形にくっきりと欠損が見られる状態。ただし穿孔はしていない。) ▽▽▽▽▽▽ ここから内容がちょっと専門的 ▽▽▽▽▽▽ サイトメガロウイルスの検出法は? いくつかの方法があるようです。 ◆PCR法でサイトメガロウイルスのDNAを検出する方法 ◆ELISA法でサイトメガロウイルスに対するIgM抗体を検出する方法 ◆患者の病変組織を免疫組織化学法で染色してから顕微鏡で観察してサイトメガロウイルス本体を検出する方法 ◆患者の病変組織をin situ hybridization法で染色してから顕微鏡で観察してサイトメガロウイルスのDNAを検出する方法 ◆antigenemia法(ペルオキシターゼ標識抗CMVヒトモノクローナル抗体染色法による血中抗原の測定)によって患者の血液中からサイトメガロウイルスに感染した白血球を検出する方法 ◆患者の病変組織をHE染色法で染色してから顕微鏡で観察してサイトメガロウイルスが感染先の細胞の中につくる特殊な構造物をみつけだす方法 どんなに感度が良い方法でも100%の感度というわけにはいかないようで、よって可能なすべての方法を同時に実施して検出すべきだと主張する論文もあるようです。 炎症性腸疾患患者におけるサイトメガロウイルス腸炎の合併率と合併例の症状の経過について ◆日本の和田陽子らの研究グループが2005年9月に発表した論文によりますと、 症状のレベルが中等症以上で症状が活動期である潰瘍性大腸炎患者128例に対して、血液をペルオキシターゼ標識抗CMVヒトモノクローナル抗体(C7-HRP、C10、C11)染色法による血中抗原の測定(antigenemia法)によって、また内視鏡検査の際に採取した生検(=生きた組織サンプル)をHE染色法や免疫組織化学法で検査したところ、32.0%(41/128例)からサイトメガロウイルスが検出された。検出された患者は検出されなかった患者に対して比較的年齢が高く、ステロイド剤抵抗性の患者が多かった。 検出された患者に対してはガンシクロビルの投与が検討されたが、投与前に増悪し緊急または待機手術となった例が4例あった。一方、ガンシクロビルを投与するまでに症状が改善した例も5例あった。結局28例にガンシクロビルを投与したところ64.3%(18/28例)に有効であった。 サイトメガロウイルスに感染していた41例のうち摘出手術を受けなかった37例について長期(平均20.3ヵ月)に経過を観察したところ、中等症以上の再燃を起こしたのは29.7%(11/37例)であったが、そのうち90.9%(10/11例)がサイトメガロウイルスに再感染していた。その10例のうち7例はガンシクロビルを再投与して緩解したが、3例は緩解せずに摘出手術となった。緩解した7例のうち6例はガンシクロビルの再投与にもかかわらず何度も再感染をしてしまった。 ◆日本の池田圭祐らの研究グループが2005年9月に発表した論文によりますと、 難治性潰瘍性大腸炎のために大腸の摘出手術を受けた35例に対して、切除した大腸標本からHE染色法と免疫組織化学法とin situ hybridization法によってサイトメガロウイルスの検出を試みたところ、51.4%(18/35例)から検出された。ちなみに血液からC7-HRP antigenemia法によってサイトメガロウイルスの検出を試みたところ、44.0%(11/25例)から検出された。 サイトメガロウイルスが検出された患者は検出されなかった患者に対して比較的年齢が高かった。 この論文において注目すべきは、切除した腸壁標本上におけるサイトメガロウイルスが検出された細胞の分布と潰瘍性大腸炎の潰瘍の分布がほぼ一致していたという記述です。この結果はサイトメガロウイルスが潰瘍の増悪、難治化に関与している可能性を強く裏付けているかも知れません。 ◆第91回日本消化器病学会総会(2005年4月)におけるランチョンセミナーで松井敏幸医師(福岡大学筑紫病院消化器科)が発表した『副腎皮質ステロイド抵抗性潰瘍性大腸炎 - 白血球成分除去療法とその非緩解要因』によりますと、 ステロイド剤抵抗性(=投与しても効かない)で血球成分除去療法も無効だった患者では明らかに感染率が高かったようです。 ステロイド剤抵抗性の活動期潰瘍性大腸炎患者38例に血球成分除去療法を実施したところ、 57.9%(22/38例)が緩解し、 42.1%(16/38例)は緩解しなかったそうですが、 「antigenemia, C7-HRP法」でサイトメガロウイルス感染を検査したところ、 感染陽性(=検出された)率は 緩解した群では 5.9%(1/17例)であったのに対し、 緩解しなかった群では57.1%(8/14例)という高率だった。 緩解しなかった患者でサイトメガロウイルス感染陽性だった患者に対してガンシクロビルを投与したところ、有効率は62.5%(5/8例)だった。 ◆インドのKishoreらの研究グループが2004年に発表した論文によりますと、 サイトメガロウイルスの感染が検出された患者は病状の経過が明らかに悪かったようです。 炎症性腸疾患患者63人(潰瘍性大腸炎61人、クローン病2人)について、血液をELISA法(IgM抗体、μ-capture)で、また、大腸の生検をPCR法で、また、大腸の生検を顕微鏡(H&E染色法)でサイトメガロウイルス感染を検査したところ、3方法いずれかの検査において一つでも陽性(=検出された)だったのは15.8%(10/63例)だったそうです。そして、その後の患者の病状の経過を追ったところ、 手術が必要となった患者は、 サイトメガロウイルスが検出された患者では40%(4/10例) サイトメガロウイルスが検出されなかった患者では 7.5%(4/53例) だった(P=0.01)。 また、病気が原因で死亡した患者は、 サイトメガロウイルスが検出された患者では30%(3/10例)、 サイトメガロウイルスが検出されなかった患者では 0%(0/53例) だった(P=0.003)。 死亡した3名は、それぞれ、 ◇ステロイド剤や免疫抑制剤アザチオプリンで効果が無かったクローン病患者で、汎血球減少症および劇症性敗血症で死亡 ◇手術後に大腸穿孔を起こし、腹腔内敗血症および敗血症で死亡 ◇手術後に腹腔内敗血症および敗血症で死亡 だったそうです。 ◆USAのKambhamらの研究グループが2004年に発表した論文によりますと、 過去の診療記録を調査して、 ◇ステロイド剤抵抗性の重症潰瘍性大腸患者40例 ◇重症だが難治ではない潰瘍性大腸炎患者40例、 ◇参照のための対照群として、炎症性腸疾患以外の病気のために大腸を切除しかつ正常な大腸を有していた患者40例 を選び出し、過去の検査のデータからそれぞれの群のサイトメガロウイルスへの感染率を検討してみたところ、 HE染色法では、ステロイド剤抵抗性の群で5%(2/40例)に感染が検出されたが、ほかの二群では検出されなかった。 免疫組織化学法では、ステロイド剤抵抗性の群で25%(10/40例)に、非難治の群で2.5%(1/40例)に、対照群で0%(0/40例)に感染が検出された(P=0.007)。 結局、対照群では検出されなかった。 ステロイド剤抵抗性の群でサイトメガロウイルスの感染が検出された10例のうち、70%(7/10例)はシクロスポリンや6メルカプトプリンやアザチオプリンといった免疫抑制剤に対しても抵抗性で、また、60%(6/10例)は大腸摘出手術を受けることになった。 感染が検出された例のうち2例はガンシクロビルによる治療を受け、ステロイド剤を徐々に減らすことに成功し、大腸摘出手術を回避することが出来た。 サイトメガロウイルスが腸壁組織に炎症を起こすメカニズムは? サイトメガロウイルスは肉芽組織の血管の血管内皮細胞(=血管の内側をびっしり覆っている細胞)に感染し、その細胞が巨大化し、その結果血管の内側が狭くなっていき、血液の流れが悪くなって組織に潰瘍が発生するのではないかとされているようです。 そのほか ◆古い論文ほどサイトメガロウイルスの検出率が低い傾向があるが、これは科学技術の発展によって近年検出能力が上がってきたことが原因とも考えられる。 ◆内視鏡検査のときにとってきた生検からのサイトメガロウイルスの検出率は低い傾向がある。これは一回の検査で採取する生検の数を増やせば率が上がってくる可能性がある。 △△△△△△ ここまで内容がちょっと専門的 △△△△△△ 最後に この件に関しては研究がまだ十分には進んではいないようですが、サイトメガロウイルス腸炎の合併が炎症性腸疾患の重症化に大きく関与している可能性が高いことは間違いないようです。サイトメガロウイルス感染症の診断と治療、および発症の予防に関するガイドラインが一日も早く作成されることが望まれます。 参考文献 ◆Wada Y, Matsui T, Matake H, and others. Intractable ulcerative colitis caused by cytomegalovirus infection: a prospective study on prevalence, diagnosis, and treatment. (英語) Dis Colon Rectum. 2003 Oct;46(10 Suppl):S59-65. <論文要約> ◆Takuya Inoue, Ichiro Hirata, Yutaro Egashira, and others. Refractory ulcerative colitis accompanied with cytomegalovirus colitis and multiple liver abscesses: A case report. (英語) World J Gastroenterol 2005 September 7;11(33):5241-5244. <無料全文> ◆Janak Kishore, Ujjala Ghoshal, Uday C Ghoshal, and others. Infection with cytomegalovirus in patients with inflammatory bowel disease: prevalence, clinical significance and outcome. (英語) J Med Microbiol 53 (2004), 1155-1160 <無料全文> ◆P J Hamlin, M N Shah, N Scott, and others. Systemic cytomegalovirus infection complicating ulcerative colitis: a case report and review of the literature. (英語) Postgraduate Medical Journal 2004;80:233-235. <無料全文> ◆Kambham and others. Cytomegalovirus infection in steroid-refractory ulcerative colitis: a case-control study. (英語) Am J Surg Pathol. 2004 Mar;28(3):365-73. <論文要約> ◆和田陽子、松井敏幸、吉澤直之、他 『難治性潰瘍性大腸炎におけるサイトメガロウイルス感染症 - その診断、治療と経過』 『胃と腸』第40巻、第10号、1371-1382頁、2005年9月 ◆池田圭祐、岩下明徳、松井敏幸、他 『手術例からみた難治性潰瘍性大腸炎におけるサイトメガロウイルス感染』 『胃と腸』第40巻、第10号、1401-1410、2005年9月 ◆『LCAP療法によるUC患者のQOL向上の可能性を求めて - 2005年4月第91回日本消化器病学会総会におけるランチョンセミナーの講演内容ダイジェスト』 旭化成メディカル株式会社作成冊子
by pascor
| 2005-12-11 00:12
| 両疾患共通
|
Comments(8)
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草はみ
at 2005-12-23 18:47
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記事改訂のお知らせです。『UCに合併するサイトメガロウイルス感染症』につきましては、最初の記事は12月11日に投稿しましたが、その後この件に関する論文を二編新たに手に入れましたので、その内容も更に記事に反映すべく改訂をほどこし、『IBDに合併するサイトメガロウイルス感染症』として本日12月23日に旧版と入れ替えました。よって、本日以前にこの記事をごらんになっている方は是非もう一度お目をお通しになってください。
先月病院に行ったときに、あまり調子がよくないので、CDの治療薬であるレミケードの治験を受けようかという話になりました。ですが、レミケードを受けるにはサイトメガロウイルスに感染していないことが条件だそうで、過去のぼくの検査結果履歴を見たところ、な!なんと!昨年6月に入院したときにサイトメガロに感染していたようです。結局、先月もう一度採血してサイトメガロウイルスの感染を調べてもらい、今日病院に行って結果を聞いたら、陰性になっていました。勝手に消えていたようです(よかった)。昨年入院したときは、ステロイド90mg/day と白血球除去2クールしたにもかかわらず、あんまりよくなりませんでした。もしやこやつのせいだったのかもしれません。恐るべしサイトメガロウイルス。結局、レミケードの治験を受けるには、陰性を確認してから6ヵ月あける必要があるとかで、もしかしたらそのころにはレミケードの治験は終わっているかもしれません(爆)。
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pascor at 2007-04-26 23:28
たきちゃんこんばんは、草はみです。
ウイルスに対する薬にはいろいろと問題があってあまり気軽に使用できないものが少なからずあるのですが、サイトメガロウイルスが自然に陰性となったということでよかったですね。 プレドニゾロンを90mg/日も使っていたんですか! 確かに、それであまり良くならなかったということはサイトメガロウイルス腸炎だった可能性もありますね。それにしても、たきちゃんの体格に対してステロイドの量が多すぎのような… 今ちょうど、サイトメガロウイルスに関する論文を2本読んでいるのですが、55歳以上の人はこのサイトメガロウイルス腸炎にかかるとその後の経過は悪いようです。若さで何とか跳ね返せてよかったですね。 (^^) 僕は冬を無事過ごしたのにもかかわらずこの季節になってインフルエンザウイスルにやられて熱を出しました。粘っこくて黄色いタンやハナが盛んに出たので間違いなくインフルエンザでしょう。昨日やっと回復しました。もちろんタミフルは飲みませんでした。3階に住んでいますので(爆)。(笑い事でもないか…)
たしかにプレ90mg/dayは、ちょっと多すぎですよね!かえって潰瘍が治りにくくなるのではないかと心配しました。主治医の話だと慶応大だかでサイトメガロウイルスはUCと関係はないという論文が最近出たということなので、まだはっきりと結論が出ていないと説明を受けました。まだ、この辺は研究の余地があるのでしょう。年齢によっては影響を受ける可能性もあるのでしょうか?ぼくはいま38歳なので微妙な年齢ですね。若くもないし年でもないし、中間的な年齢かな。まぁa、サイトメガロが消えててよかったって感じですかね(笑)
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草はみ
at 2007-04-28 23:50
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たきちゃん、こんばんは。
>主治医の話だと慶応大だかでサイトメガロウイルスはUCと関係はないという論文が最近出たということなので、まだはっきりと結論が出ていないと説明を受けました。 その論文(Am J Gastroenterol 2007 ;102 :331-337)をちょうど読んでいるところです。「要約」の「結論」のところには、 『サイトメガロウイルス(CMV)は活動期UC患者においてしばしば再活性化するが、抗ウイルス剤を投与しなくても消失する。ゆえに、抗ウイルス剤による治療はCMVの再活性化だけがみられるUC患者ほとんどに対して、CMV-antigenemiaの値が低いかぎり、抗ウイルス治療は必要とされるべきではない。』 とありまして、 ところで should not be necessary for という部分が英語的にどうかなと思いますが、それはおいときまして、 「抗ウイルス剤を投与しなくても消失する」 と言い切っていいのかなあと思いますが、それもおいときまして、 [下に続く↓]
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草はみ
at 2007-04-28 23:51
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「CMV-antigenemiaの値が低いかぎり」つまり「患者のCMV抗原の血中濃度が低い限り」と、論文において議論の対象とする患者に制限を求めており、この部分を読み飛ばしてしまっては絶対にいけないと思います。医学は命がかかっている学問ですから、読み落としは無いようにしていきたいところです。
論文の5ページ目には 『今回の我々の治験に参加した(すべての)患者はCMVのantigenemiaとPCRの値が低かったということに留意していただきたい。CMV-antigenemiaの値が高ければ、生検の結果がどうであれ、抗ウイルス治療を検討すべきかもしれない』 と書かれています。 つまり、 「CMV腸炎は活動度が軽ければ抗ウイルス剤を使わなくても自然治癒する可能性があり、一方、活動度が重ければ抗ウイルス剤の使用も検討すべきである。」 ということのようです。
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at 2009-05-27 20:29
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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草はみ
at 2009-05-27 21:30
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こんばんは、お久しぶりです。
投薬で効果があってよかったですね。 ATM療法が効かなかった場合はサイトメガロウイルス腸炎を疑ったほうがいいと思います。 次の再燃はずっと先であって欲しいところですが、再燃した時にはステロイド剤も含む免疫抑制剤系の薬剤を使用しないほうがいいかもしれませんね。ATM療法とか広島漢方が出てきたことですし、そうすることも可能だと思います。
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