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【作用のメカニズム】 細胞の核の中でDNAをコンパクトに巻き取る役目をしているヒストンというタンパク質があるのですが、そのヒストンからアセチル基をはずす役目をしている酵素の働きを阻害する薬剤のようです。癌に対する効果が知られているようなのですが、そのほかに炎症を抑える効果があるようです。 【開発コード】 ITF2357 【薬剤の系統】 ヒストン脱アセチラーゼ阻害剤 【現在の開発者】 Italfarmaco S.p.A. (イタリア・ミラノ) 【開発の段階】 海外: クローン病に対して第2相 (標準的な治療で改善しない中等症から重症の難治性クローン病に対して多施設・無作為・偽薬対照試験の参加者をヨーロッパで現在募集中のようです。投与量と投与期間は50mgを2回/日を8週間のようです) 【投与形態】 経口(=口から飲む) 【既に認可を得ている適応】 なし 【ほかに治験が実施されている疾患】 全身型若年性特発性関節炎(SOJIA) 慢性骨髄増殖性疾患 ホジキンリンパ腫 など 【副作用】 不明 (免疫抑制系の薬剤に共通な副作用、例えば感染症、血球減少などがおそらく存在すると思います) 【詳細】 癌に対する効果があるようですが、少ない用量で免疫抑制の効果があるようです。免疫抑制剤としては新しい系統の薬剤となるかもしれません。 DNAは、例えばヒトでは1本約2mもの長さがあるのですが、小さな細胞の核の中にコンパクトに収まるようにヒストンというタンパク質で出来た糸巻きのようなものに巻き取られています。そのヒストンに対するアセチル化という化学的修飾を阻害する薬剤のようです。 細胞の核は「遺伝情報が書かれたDNAを収蔵する図書館」のといったような場所なのですが、この図書館においてはDNAは全て「巻物」の形で収納されています。ヒストン脱アセチラーゼという酵素は巻物の軸からアセチル基という化学物質を外してその巻物の巻きを固くしてDNA情報が読み出されにくくなるようにする役目をしている酵素です。ちなみに、逆の働きをしているヒストン・アセチルトランスフェラーゼという酵素も存在します。ヒストン脱アセチラーゼの働きが妨害されDNA情報が読み出され易くなるとなぜ免疫抑制効果や癌抑制効果がみられるのかは、詳細は不明のようです。予想とは逆の効果です。しかし、免疫抑制剤には発癌確率の上昇を副作用として持つものが多いですので、逆に発癌確率を下げる新しい免疫抑制剤の登場とならないものか、期待が持たれます。 下のサイトで、DNAがヒストンにどのような形に巻き付けられているのか、ヒストン脱アセチラーゼによる脱アセチル基によってDNAの巻き取られ方がどのように変化するのかをCG動画によって理解することが出来ます。 Find information about targeting HDAC at TargetHDAC.com (英語) 【主な情報源】 ◆Efficacia clinica di anti-histone deacetilasi nella malattia di Crohn moderata severa (イタリア語) ◆The Histone Deacetylase Inhibitor ITF2357 Reduces Production of Pro-Inflammatory Cytokines In Vitro and Systemic Inflammation In Vivo. (英語) Flavio Leoni, Gianluca Fossati, Eli C Lewis, Jae-Kwon Lee, Giulia Porro, Paolo Pagani, Daniela Modena, Maria Lusia Moras, Pietro Pozzi, Leonid L Reznikov, Britta Siegmund, Giamila Fantuzzi, Charles A Dinarello, and Paolo Mascagni1. Mol Med. 2005 Jan–Dec; 11(1-12): 1–15. [無料全文.html]
by pascor
| 2008-07-25 22:05
| 新薬開発状況
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