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多発性硬化症(MS)の患者にnatalizumab(商標名:Tysabri)を投与したところ直後に悪性黒色腫の発症がみられた例を立て続けに2例も経験したという書簡形式の報告記事が医学専門雑誌The New England Journal of Medicine(2008 Feb 7;358(6):647-8)に掲載されたようです。 Tysabriは免疫細胞が腸管粘膜の中に入っていくために細胞の表面に持っているalpha4インテグリンという特殊な腕の働きを封じる抗体製剤です。USAで中等症から重症のクローン病、USAとEUで多発性硬化症に対する治療薬として認可されています。 悪性黒色腫(melanoma)は皮膚癌の一種で、黒いメラニン色素を産生するメラニン細胞の癌です。小さいうちに切除すれば死亡することはないようですが、良性の腫瘍であるホクロとなかなか見分けが付けにくい場合が多いようで、早期発見のためには特徴をよく知っておく必要があると思います。体のほかの部分に転移しやすいそうで、注意が必要なガンだそうです。皮膚癌のうちでは悪性度が高いそうです。紫外線が強い地方に住んでいる白人に多いとされています。オーストラリアでは半ば国民病というような扱いで予防と早期発見の徹底を広く呼びかけたりしているようです。ホクロに出血がある、異常な速さで大きくなっていっている、色調が不均一、境界が不明瞭というような特徴がある場合には皮膚科でみてもらったほうがいいようです。 多発性硬化症の46歳女性は第1回目のTysabriの投与を受けてすぐに以前から肩にあったホクロが突然増殖を始め、悪性黒色腫と診断されたそうです。リンパ節に入って拡散、転移し、生存は絶望的なようです。 もう1例の多発性硬化症の45歳女性は、Tysabriの投与を数回受けたのち、目の網膜にあったホクロが悪性黒色腫となったそうです。彼女は家族に発症歴があり、体に非典型的なホクロがあり、網膜のホクロは少なくとも9年前には存在が確認され経過観察を続けていたそうです。 実は、Tysabriの治験段階でも最初の投与をうけてすぐに転移性の悪性黒色腫を発症して死亡した男性の例があったそうです。 Tysabriの投与と悪性黒色腫の発生に因果関係があるのかどうかは大規模に患者を登録してデータを取らなければはっきりとは言えませんが、免疫抑制系の薬剤を使用するときには事前に悪性黒色腫の疑いがあるようなホクロがないことを確認しておく必要があると思います。なぜなら、免疫系は細菌やウイスルなどの外来異物だけでなく内部に生じた癌細胞などの悪性の細胞を排除する働きもしているからです。 【情報源】 ◆Multiple Sclerosis Drug May Be Linked to Melanoma - Forbes.com (英語) ◆Multiple Sclerosis Drug May Cause Skin Cancer - medindia.net (英語)
by pascor
| 2008-05-26 23:45
| 両疾患共通
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