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ビタミンDは健康的な骨の形成のために重要なビタミンとして一般に知られてきましたが、最近、癌や感染症や自己免疫疾患の発症抑制のためにも重要であることがわかってきたようです。 ビタミンDには、食物からの摂取のほかに、皮膚に紫外線を浴びることによる自前の生成という供給源があるのですが、潰瘍性大腸炎やクローン病の患者が緯度の高い国ほど多いことや、冬が始まる季節に再燃する例が多いという傾向があることの理由として、日照時間の長短が関係している可能性も出てくることになります。 また、血液検査によってビタミンDが不足している人が多いことがわかったようです。食物やサプリメントからの摂取や日光浴をどの程度実行すれば不足にならないかというガイドラインの作成と周知を急がないといけないようです。 【情報源】 ●Cell Defenses and the Sunshine Vitamin (英語) Scientific American, November 2007 ●上記記事の紹介文: 科学雑誌『日経サイエンス』のホームページ 「ビタミンDの多彩な効用 がんや感染症にも」 (日本語) ▽▽▽▽▽▽ ここから記事の概要の紹介 ▽▽▽▽▽▽ ビタミンDが不足すると「くる病」という骨の成長障害が起こることが判明して以来、長い間ビタミンDは骨の形成だけに関係する栄養素だと考えられていたが、最近の研究で癌や感染症や自己免疫疾患の発症抑制のためにも重要であることがわかってきた。 (草はみ注: 伝統的な日本食にはビタミンDが十分含まれていたため、くる病は日本ではまれだったようですが、重要な供給源である乾燥椎茸の製造方法が天日干しから今では乾燥機に変わってしまったため、これからは日本人もビタミンD不足に注意しなければならないかも知れません。) 抗菌剤が開発されるまでは結核の治療法の一つとして「日光浴」という手段がとられていたが、ビタミンDに病原微生物に対する抵抗力を増強する働きがあることが判ったことから、日光浴に本当に結核の治療効果があった可能性が出てきた。 (草はみ注: サナトリウムは日当たりが良い所に建てられることが多かったようです。更に「日光室」というものが設けられたりしたようです) ビタミンDは1000以上の遺伝子の制御に関わっているとされている。ビタミンDが活動を制御することが判っている組織や細胞としては、骨、肝臓、脳、神経、乳房、すい臓、脂肪組織、副甲状腺、腸、免疫細胞、前立腺、腎臓、皮膚角質細胞などがある。 癌を抑制するための幾つかの遺伝子の活動をビタミンDが活性化させることが実験で判っている。例として、DNAが傷ついてしまった細胞の増殖を抑制する働きのあるGADD45alpha遺伝子の活性化などがある。 25ヒドロキシ-ビタミンDの血清中濃度が20ng/mlより低かった人は乳癌、前立腺癌、大腸癌のリスクが30から50%高かった。 ノルウェイやアイスランドなどの高緯度地域に住む女性は赤道地域に住む女性と比べて卵巣癌を発症するリスクが5倍だった。 ネブラスカ州の55才以上の女性にビタミンD3を3年以上1日に1100IU摂取し続けてもらったところ、偽薬を飲み続けた女性と比べて癌を発症するリスクが77%低かった 試験管での実験で、天然抗菌物質であるcathelidicinの免疫細胞による分泌をビタミンDが促進することが判っている。 (草はみ注: このcathelidicinの欠乏がクローン病の発症に関係している可能性があるのではないかとの論文もあるようです) ビタミンDはサイトカインの働きを抑制することによって免疫細胞の過剰な活動を抑止することが判っている。自己免疫疾患である多発性硬化症では、高緯度の土地ほど発症率が明らかに高く、また、日照時間が短い日々が続いたあとの季節である春に最も病気の活動度が高く、逆に秋に最も低くなるという傾向が見られる。 (草はみ注: 自己免疫疾患とは、本来細菌やウイルスなどの外敵をやっつける働きをするはずの免疫細胞が自分自身の体の細胞を攻撃してしまうという暴走を起こすことによって発症する病気のことです。多発性硬化症では神経が攻撃されます。潰瘍性大腸炎やクローン病でも免疫細胞が腸壁の細胞を攻撃しているという証拠が観察されますので、自己免疫疾患という一面も持つ病気として考えられています。) (草はみ注: 日本では日照時間が少ないのは秋田、富山、福井、新潟などなのですが、特に罹患率が高い県ではありません。日本の中においては日照が少ないほど発症率が高いという法則は当てはまらないのかもしれません。冬が始まる時期に再燃する人が多いというのは日本でも当てはまっていると思います。ちょうど冬至の頃です) USAの兵士の血液サンプルと病歴記録を調べてみたところ、血中の25ヒドロキシ-ビタミンDの濃度が40ng/ml以上だった人は25ng/ml以下だった人と比べて血液採取ののちに多発性硬化症を発症したリスクが62%低かった。 フィンランドの乳児に生れてからの1年間にビタミンD3を毎日2000IU投与したところ、自己免疫疾患型糖尿病(1型糖尿病)を発症するリスクが80%低くなった。 緯度の高い地方に住む人にビタミンDが不足している人が多いようである。ビタミンDは4万IU/日以上を長期間摂取し続けると毒性があるとされているので、サプリメントによる補給をする場合には摂取しすぎに十分注意すべきである。 (草はみ注: ビタミンDは魚類の肝臓(アンコウのきもなど)や天日干しキノコ類にかなり豊富に含まれていて、乾燥キノコ類や鶏卵や魚介類に多く含まれているようです。干し椎茸などの乾燥キノコ類は、最近は天日でではなく暗い乾燥機の中で乾燥されたものが多いようですので、そういった製造法のものはビタミンDを大量に含んではいないようです。購入後に家庭で天日にさらせばいいそうです。) 白人の成人女性が夏にビキニを着て15分から20分日光を浴びると約1万IUのビタミンDを得ることが出来る。肌にメラニン色素が多い、つまり皮膚の色が濃い人ほど日光浴によるビタミンDの合成量は少なくなる。 △△△△△△ ここまで記事の概要の紹介 △△△△△△
by pascor
| 2008-01-25 21:12
| 両疾患共通
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Comments(3)
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草はみ
at 2008-01-25 21:22
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この記事で情報源とした科学雑誌の記事はAHOさんにその存在を教えていただきました。
AHOさん、ありがとうございました。
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DCE
at 2008-01-26 18:25
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草はみさん
今日も面白い記事を提供してくれてありがとうございます。 面白いお話ですね。 大変興味深いです。 UC・CD発症にまじめな人が多いとHPに書かれているのを見る事があるのですが,ディスクワークが多く,日光に当たらなくなっているからかもしれません。また発症年齢が就職していく年頃に多いことにも何か因果関係があるのかもしれません。
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草はみ
at 2008-01-26 22:00
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DCEさん
確かに真面目な人が多いように感じます。 が、真面目な人ということは、運動不足はいけないということで、三日坊主とならずに続けて運動をする人であるような気もします。地球温暖化をどうにかしようと出来るだけ自転車を使うような人でもあると思います。室内遊戯であるパチンコやマージャンをする人も少ないと思います。競馬なんかは野外ですが。 日本では東海道・山陽新幹線が走っている都府県で罹患率が高いことが知られていまして、北に行くほど罹患率が高い欧米とは状況が違うようです。日本で日照時間が短いのは秋田、富山、福井、新潟などですが、罹患率は高くないようです。
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