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慶応大学医学部の消化器内科で、消化管に関連する難病である非特異性多発性小腸潰瘍(CNSU)とクロンカイト・カナダ症候群(CCS)に対する青黛服用の治験が開始されたようです。 青黛が有効な難病のリストに、潰瘍性大腸炎とクローン病以外にも多くの疾患が一つ一つ加えられていくという進展がこれからの将来に見られればと願います。 ◆非特異性多発性小腸潰瘍及びCronkhite-Canada症候群に対する青黛の安全性および治療効果の研究 実施責任組織: 慶應義塾大学 消化器内科 UMIN試験ID: UMIN000025246 一般公開日: 2016/12/13 非特異性(ひとくいせい)多発性小腸潰瘍(CNSU)は、「慢性出血性小腸潰瘍」という別名を持つ、小腸の病気です。小腸に潰瘍が多発して、出血で貧血になり、栄養吸収能力が落ちて、病状が慢性に経過する事から、「クローン病の小腸型ではないか?」という推測がされる事もあったようですが、「クローン病とは内視カメラの画像の特徴が違う」「クローン病に対する標準的な治療がほとんど効かない」という意見から、クローン病とは違う疾患として認知され、現在は厚生労働省が治療費の一部を負担する、いわゆる「難病指定」がされている疾患です。 ちなみに、医学専門用語「非特異性」(ひとくいせい)には複数の違った意味があるのですが、この疾患の名称に関しては「原因不明の」という意味で用いられています。 そしてごく最近、2015年に日本の研究チームが、SLCO2A1という遺伝子の変異が主要な原因であるという研究結果を発表しました。という事は、近い将来、この病名から「非特異性」という部分が消え、「劣性遺伝性」や「家族性」といった言葉と置き換わる可能性があります。 ▽▽▽▽▽▽ ここから内容が少し専門的 ▽▽▽▽▽▽ SLCO2A1はプロスタグランジン輸送タンパクをコードする遺伝子です。このタンパク質は細胞膜を12回貫通する構造で、細胞膜にがっつり腰を落ち着けて、プロスタグランジンE2(PGE2)などの膜内外の濃度を調節しているそうです。プロスタグランジンE2は免疫調節や平滑筋の収縮などに関与している生理活性物質で、臨床では陣痛誘発促進剤として用いられています。 この疾患の発症にSLCO2A1遺伝子の変異が関与しているという事は、プロスタグランジンE2の濃度異常が小腸に潰瘍を形成し出血を起こす可能性があるという事になります。プロスタグランジンE2が小腸型クローン病の発症にも関係しているのかどうか、研究が進めばと思います。 SLCO2A1遺伝子の変異は原発性肥大性骨関節症(primary hypertrophic osteoarthropathy :PHO)という別の疾患の発症にも関与しているとみられているようです。 △△△△△△ ここまで内容が少し専門的 △△△△△△ クロンカイト・カナダ(Cronkhite-Canada)症候群(CCS)は、胃、大腸、小腸などの消化管に100個以上のポリープができる病気です。下痢、腹痛などの症状がみられるそうです。消化管以外の症状として全身性の脱毛、爪の萎縮、皮膚の色素沈着などがあるそうです。 多発ポリープの影響で腸重積が起こったり、また大腸癌や胃癌の発症率が一般の人より高かったりするようです。しかし死亡率がそうそう高いという訳でもないようです。 この疾患にも、厚生労働省が治療費の一部を負担する、いわゆる「難病指定」がされています。 診断を受けた時の年齢の平均が63.5歳と、潰瘍性大腸炎やクローン病と比べるとかなり高いようです。発症に遺伝子の変異は関係していないと現在のところ考えられているようです。治療薬としては、ステロイド剤くらいしか現在のところ見付かっていないようです。 【そのほかの情報源】 ◆A Hereditary Enteropathy Caused by Mutations in the SLCO2A1 Gene, Encoding a Prostaglandin Transporter. Umeno J, Hisamatsu T, Esaki M, Hirano A, Kubokura N, Asano K, Kochi S, Yanai S, Fuyuno Y, Shimamura K, Hosoe N, Ogata H, Watanabe T, Aoyagi K, Ooi H, Watanabe K, Yasukawa S, Hirai F, Matsui T, Iida M, Yao T, Hibi T, Kosaki K, Kanai T, Kitazono T, Matsumoto T. PLoS Genet. 2015 Nov 5;11(11):e1005581. doi: 10.1371/journal.pgen.1005581. eCollection 2015. <論文要約> <掲載紙の公式無料全文> (英語) ◆Cronkhite-Canada syndrome: report of six cases and review of literature. Wen XH, Wang L, Wang YX, Qian JM. World J Gastroenterol. 2014 Jun 21;20(23):7518-22. doi: 10.3748/wjg.v20.i23.7518. <論文要約> <掲載紙の公式無料全文> (英語)
by pascor
| 2016-12-14 21:07
| 両疾患共通
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