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このブログの記事 「慶応大医の潰瘍性大腸炎青黛服用20人治験の結果」[2016-07-03] を書くにあたって、AhR(Aryl Hydrocarbon Receptor、芳香族炭化水素受容体)について調べていまして、興味深い論文を発見しました。 ◆Indirubin and indigo are potent aryl hydrocarbon receptor ligands present in human urine. Adachi J, Mori Y, Matsui S, Takigami H, Fujino J, Kitagawa H, Miller CA 3rd, Kato T, Saeki K, Matsuda T. J Biol Chem. 2001 Aug 24;276(34):31475-8. Epub 2001 Jun 25. <論文要約> <掲載紙jbcの公式無料全文.html> 健康なヒトの尿中に化学物質インジルビン(indirubin)とインジゴ(indigo)がそれぞれ約0.2nM(ナノモーラー)(M=mol/L)含まれている事を確認したそうです。 ちなみに、伝統生薬(しょうやく)である青黛(せいたい)にはさまざまな天然化学物質が含まれているようですが、これらインジルビンとインジゴは青黛の主要含有成分と言って良い化学物質です。 論文を読んでみますと、尿を提供した人によってインジルビンやインジゴの濃度にかなり差があるようです。ひょっとすると、腸内細菌のバリエーションの個人差が関係しているのかも知れません。 インジルビンやインジゴの尿中濃度または血中濃度が低い人は潰瘍性大腸炎やクローン病を発症しやすいというような事があるやも知れません。更には、そのほかの様々な炎症性の疾患にかかりやすいというような事もあるやも知れません。インジルビンやインジゴの生体内での働きについて研究する事によって、広範囲にわたる複数の疾患の発症原因が一気に判明し、しかも同時に治療法まで見付かるというような事があるやも知れません。 ▽▽▽▽▽▽ ここから内容が少し専門的 ▽▽▽▽▽▽ インジルビンとインジゴは、それぞれほとんどがグルクロン酸抱合体、または硫酸抱合体として尿中に存在している可能性が高いようだという実験結果が書かれています。 急性骨髄単球性白血病、ポルフィリン尿症、紫色蓄尿バッグ症候群などの疾患においては、患者の尿からインジルビンとインジゴが検出される事は今までに知られていたようですが、健康なヒトの尿からインジルビンとインジゴを検出したのは、この論文の研究チームが始めてだというような事が書かれています。 論文の図1には、尿を提供した健康な10人各々の、尿中のインジルビンとインジゴの濃度が表になっています。濃度に個人でかなり差がある事がわかります。ひょっとすると、これらの濃度が低い人のグループと高い人のグループを長期間追跡すると、低いグループで潰瘍性大腸炎またはクローン病の発症率が高いというような事実が出てくるかも知れません。つまり、腸内細菌のバリエーションが乏しくて、腸内でトリプトファンなどからインジルビンやインジゴを合成する能力が低い人は潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患を発症し易く、発症者に青黛を投与するとインジルビンとインジゴが供給され、炎症が治まるというメカニズムが存在するかも知れません。または、発症者に便微生物移植療法を実施して、インジルビンやインジゴを合成する能力を持つ細菌や酵母を腸内に供給すると、インジルビンとインジゴが生産され、炎症が治まるというメカニズムが存在するかも知れません。 研究チームは、ウシの血清からもインジルビンとインジゴの存在を検出しています。 △△△△△△ ここまで内容が少し専門的 △△△△△△
by pascor
| 2016-07-10 16:48
| 両疾患共通
|
Comments(2)
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mknmct0525
at 2016-12-17 11:50
草はみ様、はじめまして。過去の記事へのコメント失礼します。いつも大変参考になる記事をありがとうございます。娘が潰瘍性大腸炎で、色々と調べていましたら、こんな記事がありました。(日本語訳ですが)ご存知でしたらすみません。
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/69ac0591b3b69b5a910e5da7bb46529d https://youtu.be/LiPZq2K_Tos この病気の原因は、腸内細菌叢の乱れや、細菌の多様性の低下が影響しているのではと盛んに研究が進められていますが、実はウイルスでは?なんて思ってしまいました。動画を見ると、バクテリオファージはとても奇妙な形をしていて恐ろしいです^^草はみ様は何か情報をお持ちでしょうか??クローン病の方の便からは、健常者と異なるウイルスの増加が見られるようですし、アメリカでは、抗生物質の代わりに肉製品に殺菌剤として使われているようです。細菌と並行してウイルスの解析も進めば、この病気の早期の原因究明になるのではと思いました。これからも貴重な情報を拝見させて頂けたらと思っております。長文失礼致しました。
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草はみ
at 2016-12-22 01:18
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mknmct0525さん
いつもこのブログを読んでくださり、ありがとうございます。 (^^) 潰瘍性大腸炎には、精神的ストレスや身体的ストレスがかかった時に再燃しやすいという特徴があります。一方、人間に感染するウイルスの中には、普段は体の中のどこかでひそんでいるが、精神的ストレスや身体的ストレスがかかった時に表に出て来て活動するという生態のウイルスが幾つかいます。 また、ウイルスが発症に関わっている疾患には、帯状疱疹など、寛解と再燃を繰り返すものが幾つかあります。 また、ウイルス感染症には、麻疹(はしか)、水痘(水ぼうそう)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)など、或る決まったの年齢期に発症しやすいものが幾つかありますが、潰瘍性大腸炎もクローン病も20歳前後という年齢期に発症する事が多いです。(ただし、これらのウイルス感染症は、基本的に一生に一度だけです。) 潰瘍性大腸炎やクローン病の発症や再燃に何らかのウイルスが関わっている可能性はあると思います。 サイトメガロウイルスが潰瘍性大腸炎の悪化や難治化に関与している例が少なくないという事は、既にほぼ明らかとなっています。 潰瘍性大腸炎やクローン病の発症には ◆何らかの細菌、何らかのカビ菌、何らかのウイルス ◆産業発達の結果身の周りにあふれるようになった様々な合成化学物質 ◆腸内細菌の状態の悪化 ◆食事内容の近代西洋化 ◆免疫機構の異常 ◆発症を後押しするタイプの遺伝子型の保持 などの要素が全て複雑に絡み合って関与していると現在のところみられていますが、確かに、それらの要素の中で最も研究が手薄なのはウイルスかも知れません。 これからウイルスの関与に関しても研究が進めばと思います。
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