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以前に 『腸管寄生虫が様々な自己免疫疾患を改善する可能性』 2011-09-23 『ブタの寄生虫の卵の服用による新治療法』 2005-10-14 で紹介しましたが、腸管寄生虫の生きた卵を服用し、腸管内で孵化(ふか)させ、腸管内で一定の期間活動させる事によって自己免疫疾患を改善する治療法が開発されつつあります。クローン病と潰瘍性大腸炎において最初に研究がおこなわれた治療法で、現在海外で当局の認可を目指した治験が行われつつあるようです。 【開発コード】 CNDO-201 【薬剤名】 ブタ鞭虫卵製剤 【海外での商標名】 TSO 【薬剤の系統】 生きた腸管寄生虫卵製剤 【現在の開発者】 Coronado Biosciences, Inc. Dr. Falk Pharma GmbH Ovamed GmbH (アルファベット順) 【製品の供給】 ドイツのOvaMed社が無菌、無ウイルスのブタ鞭虫卵(商標名:TSO)を供給しているようです。OvaMed社へはデンマークのParasite Technologies A/S社がSPF豚(無病原性豚)から採取した寄生虫卵を供給し、OvaMed社が10工程をかけて洗浄・殺菌しているようです。 【開発の段階】 ◇クローン病: ドイツ、デンマーク、オーストリア、チェコ、スイスで第2相。(活動期のクローン病患者に対する2重遮蔽・無作為・偽薬対照・多施設試験により、3つの異なる投与量におけるそれぞれの効果と安全性を評価) USAで第1相。(クローン病患者に対する用量連続漸増・2重遮蔽・偽薬対照・単回投与試験により、3つの異なる投与量における安全性と忍容性(=副作用などがもたらす不快感が耐える事ができるレベル内であるかどうか)を評価) ◇潰瘍性大腸炎: 海外で第2相 【投与形態】 経口(=口から飲む) 【既に認可を得ている適応】 なし 【ほかに開発が行われている疾患】 多発性硬化症: 海外で第1相 関節リウマチ: USAニューヨーク州Albany大で治験を実施予定 乾癬性関節炎: イスラエルで治験を実施予定 自閉症: USAで治験実施予定 季節性アレルギー: コペンハーゲンで治験を実施 落花生およびナッツアレルギー: ハーバード大で治験を実施 【副作用】 下痢、上腹部痛、腹部膨満など。いずれも軽度。 安全性についてですが、USAのアイオワ州では養豚業の従事者の約2割がブタ鞭虫を宿しているのだそうですが、この寄生虫が原因の職業病はみられていないという事が安全性の根拠の1つとなっているようです。更に、ブタ鞭虫は人間の腸の中で卵からかえっても長くは生きられないそうです。しかしそのために、2週間に1度の服用が必要となってしまうようです。 ブタの寄生虫を使用し人間の寄生虫を使用しない理由は、ヒト鞭虫は時に貧血などの副作用を起こすからだそうです。 【詳細】 クローン病と潰瘍性大腸炎に対するブタ鞭虫による寄生虫療法を考案し、最初に臨床投与したUSAアイオワ大学のWeinstock氏のコメントによりますと、寄生虫への感染率が低い国ほど自己免疫疾患の発症率が高いという事実から、寄生虫が寄生しなくなった事で先進国の住人は自己免疫疾患にかかりやすくなったのではないかという仮説を立て、寄生虫療法を考え付いたそうです。下のリンクのページ中の図は、右が「寄生虫感染率」(Helminths infestation incidence)で、左が「自己免疫疾患発症率」(Autoimmune disorders incidence)です。見事に逆の分布になっています。 ↓ Hygiene Hypothesis for CNDO-201 (英語) 作用のメカニズムは、ブタ鞭虫が人間のTリンパ細胞(Th1とTh2)の活動を抑制する事によると、研究者達は現在のところ考えているようですが、現在臨床で治療に用いられている既存の免疫抑制剤においては重篤なものを含むさまざまな副作用が報告されているのに対して、この治療法では軽度な副作用しか報告されていないようです。ブタ鞭虫が人間の免疫を抑制する何らかの物質を分泌していると仮定しまして、ひょっとすると寄生虫は宿主(=人間)の体調に合わせてきめ細かに分泌量を調節する能力を持っているのではないかと、草はみは仮説を思いつきます。人間の免疫の総力は、昼間と夜間で違いますし、精神的ストレスや過酷環境などの身体的ストレス、摂取食物に含まれる免疫影響物質などによって分単位で目まぐるしく昇降するのだと思うのですが、寄生虫はそれらを敏感に感知して免疫抑制物質の分泌量をきめ細かに24時間体制で調節しているのではないでしょうか。なので既存の免疫抑制剤に共通してみられる重篤な感染症などの副作用が出ないのではないでしょうか。 寄生虫には平和共存主義のものと略奪主義のものがいるようですが、平和共存主義の寄生虫の立場に立ってみますと、宿主(=人間)が短命だと自分達寄生虫も短命を余儀なくされてしまいます。寄生先の人間に殺し合いを好まない穏やかな性格になっていただいて、或る程度長生きしていただいて、或る程度健康に暮らしていただいて、或る程度稼いで美味しい物を食べていただけると、自分達寄生虫も安定した環境で充分な栄養にありつけることになります。更に、宿主が元気で機嫌が良いと、旅行などの遠出を頻繁にしますので、便に生み付けた卵をあちこちにばら撒いていただけて子孫繁栄につながります。ですので、平和共存主義系の寄生虫の中には、栄養をもらうかわりに「免疫機構の精密調節サービス」を人間に対して実施している種があるかも知れません。日本の企業でも、「散歩のようにのんびり毎日機器を覗(のぞ)いて巡回しているだけの給料泥棒め」と技術者を解雇してのちに、その技術者が正常なライン運用のための微妙な調整に重要な役割を果たしていた事に気が付くが、ほかに真似できる人員がおらず、時既に遅しといったような事例がよくあるようです。このような次第で、ラインが不具合だらけの病的状態になってしまっている事業所が日本に多い事に驚きます。(ちなみに、解雇されたのちに中国や韓国の新興メーカー企業から高給でスカウトされて、現地でラインの構築を監督したり、若い技術者の育成指導にあたっている日本の技術者も少なくないようです)。一方、会社内で決して解雇されない高い地位に座っている人が会社の大きなお金をありえない事に浪費してしまい、会社が瀕死の状態になってしまっているというような事例もあるようです。これはあきらかに略奪主義系の寄生虫です。 ところで、日本の寄生虫研究者で、日本のサナダムシが絶滅寸前であることに危惧を感じて、自分のお腹でサナダムシを飼っていた人がいます。今回紹介した治験ではブタ鞭虫が採用されていますが、もっと優れた免疫調節能力を持つ絶滅危惧寄生虫種がいるかも知れません。 【主な情報源】 ◆Coronado Biosciences Signs Binding Terms of Agreement to enter into Collaboration for Development of CNDO-201 for Crohn’s disease with Dr. Falk Pharma and OvaMed (英語) December 22, 2011 ↑ この対マスメディア発表文書の中に「Japan」という単語が見られるのですが、近い将来日本でも治験を実施する事を視野に入れているのかも知れません。 ◆TSOの治験状況の一覧: Search of: Trichuris Suis Ova - List Results - ClinicalTrials.gov (英語) ◆Coronado Biosciences (NASDAQ: CNDO) a new public company developing unique products for autoimmune diseases and cancer (PDFファイル形式) (英語) Bobby W. Sandage, Jr., PhD President & Chief Executive Officer January 2012
by pascor
| 2012-01-26 23:26
| 新薬開発状況
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